子育て心理の専門家が教える叱り方~押さえておきたい3つの場面と2つの誤解

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子育て心理の専門家が教える叱り方~押さえておきたい3つの場面と2つの誤解

小中高教育 2018.12.18

子どもにとってはちょっとしたイタズラでも、親から見れば、「これは叱らねば!」と思うことはよくあります。しかし、そのときの勢いのまま叱ってしまい、後になって猛反省し、自分の叱り方に自信を失くしてしまっている方も多いようです。そこで今回は、子育て心理学から見た、叱るべき場面と、叱り方のポイントをご紹介します。

子どもを叱るべき3つの場面

子どもを叱るべき3つの場面

子どもを叱るべき場面は「自分や他人を傷つけてしまう恐れがある行動」「道徳や社会のルールに反している行動」「人間関係を壊してしまう行動」の3つに分けられます。

〇自分や他人を傷つけてしまう恐れがある行動
例えばハサミを持ちながらふざけていたり、友達をぶったり、ライターなど発火の恐れがあるもので遊んでいたりなど、子ども自身や周りの人々を傷つけてしまう恐れがある場面では子どもを叱ることが求められます。特に3歳くらいまでの小さな子はこういった行為が危険だと認識していないことが多いものです。こういった行為がなぜ危険なのかも伝えるようにしてください。

〇道徳や社会のルールに反している行動
子どもの道徳観やルールを守る意識(規範意識)を育てるのも、親の務めです。もちろん子どもですから、のびのびしているのがベストですが、何でも好き放題=のびのびではありません。公園や児童館などでも、子どもたちにとっては立派な社会です。そこで心地よく過ごすためには、ルールを守ることも必要です。道徳観や規範意識が身に付かないまま成長してしまうと、その子が年を重ねてから困ってしまいます。小さな子にルールを教えていくのは根気のいることですが、時間をかけて向き合っていけば、あとになって必ず「がんばってよかった」と思える日がきます。叱ると言っても、怒鳴ったり罰したりするのではなく、知らないことをゼロから教えていくつもりでコツコツと進めていきましょう。

〇人間関係を壊してしまう行動
道徳やルールに加えて、良好な人間関係を築ける能力も子どもの成長には欠かせない大事なことです。一度約束したことを簡単に破ったり、人の心を傷つけるようなウソをついたりなど、人間関係を壊してしまう可能性がある行動も親が目を配りたいポイントです。とくに、ウソは親が強く叱ることで、「さらなるウソに逃げやすい」という扱いづらさがあります。子ども時代のウソは、基本的に自己防衛の手段として使われることが多いので(ボクじゃない、ワタシはやってない…など)、その子の心が"危機"と感じるほどの圧迫感で責めると逆効果です。子どものウソは、大人から見たら明らかに分かるものばかり。そのような場面では、ウソを白状させることではなく、より良い行動を学んでもらうことを意識しましょう。注意することは大切ですが、必要以上に攻め込まないよう気をつけてください。

叱り方の誤解、押さえておきたい2つのポイント

叱り方の誤解、押さえておきたい2つのポイント

一般的に「叱る」というと、強い勢いを感じるもの。しかし、実際はその勢いで叱ってしまうと、ほぼ間違いなく悪循環が起こります。たとえば、子どもが反抗してきた、それを見たママはさらにブチ切れた…など。そこでここでは、ついついやってしまいがちだけれど、実は心理学的に見るとNGである「叱り方の誤解」について2つご紹介します。

〇誤解1:強く叱った方が効く
子どもが言うことを聞かないと、親の声のトーンが1つ上がります。それでも聞かないと、叱り方がより強く・激しくなっていきます。しかしそれで子どもが言うことを聞くかというと、そうではありません。多くの場合、余計にこんがらがってしまいます。人間誰でも、強く押されたら、自分が倒れないように、相手を押し返そうという心理が働きます。よって、ママが怒鳴れば、子どもも怒鳴り返してくるのがオチ。しかもいったん感情的になってしまうと、「いいかげんにして」などと、大人しか分からない言葉を発してしまいがちです。

子どもを叱る際に必要なのは、子どもが理解できるような言葉で何をすべきか(=望ましい行動)を伝えることです。感情的になりそうになったら、がんばって深呼吸。自分に、「怒鳴ってもいいことはない」「むしろ余計に面倒になるだけ」と言い聞かせてみてください。

〇誤解2:痛い思いをした方が効く
カッとなって子どもに手を上げてしまい、後悔したことがある方もいるでしょう。一方、「少しくらい痛い思いをしないと子どもは学ばない」と思っている方もいます。しかし、心理学的に見て、体罰は百害あって一利なし。体罰はその場での即効性があるため、効果があったような感覚に陥り、それが繰り返しを招いてしまいます。しかし、その子が行動を改めたのは、反省したからではありません。叩かれるのがイヤだからです。その行動を改める理由は学んでいないので、また繰り返します。体罰には教えがないからです。しかもその子は、別のことを学んでいます。それは、困ったときは、パパやママみたいに、力でなんとかすればいいということ。公園に行って、スコップが欲しいあまりにお友だちを叩いてしまったりしたら、それこそ目も当てられません。暴力は連鎖しやすいので、注意が必要です。

「行動を消す」ではなく「行動を育てる」のがポイント

「行動を消す」ではなく「行動を育てる」のがポイント

叱る目的は、道徳観やルールといった子どもが元々持っていない心の資質を育てることです。そのためには、ただ子どもの行動をコントロールするような指図や命令ではなく、いい行動を取った方がいいと思わせる環境を提供していくことが大切です。子どもの嘘を減らしたいとき、「ウソはダメ、泥棒のはじまりだよ」と注意することが多いと思いますが、実際は、「正直なのはとてもいいことだよ」と伝えた方が効果が高いことが、アメリカの研究でも分かっています。大事なのは、「何をして欲しくないか」ではなく、「何をして欲しいか」を伝えること。叱りモードになると、ついつい「ダメダメ」と行動否定に傾いてしまいますが、それではその行動はなくなりません。叱るということは、新しい行動を育てることです。目線を「行動を消す」ではなく、「行動を生む」へとシフトすると、自ずと感情のコントロールもしやすくなります。

監修:佐藤めぐみ

監修:佐藤めぐみ

ポジティブ育児研究所 代表 & 育児相談室「ポジカフェ」主宰 イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。現在は、ポジティブ育児研究所でのママ向けの検定事業、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポートする活動をしている。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。

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