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年収アップが学力向上に関係するって本当!?全国学力テストの「保護者に対する調査」から見えてくるもの
毎年、全国の小・中学生が受ける「全国学力テスト」。子どもの成績を気にしている保護者のみなさんは多いと思いますが、実は全国学力テストでは「保護者に対する調査」も行われている事をご存知でしょうか。保護者に対する調査の結果を見てみると、家庭環境と学力向上との関係性を知る事ができます。今回は2017年度に実施された調査結果をもとに、いくつかの興味深い関係性についてご紹介していきます。
そもそも「全国学力テスト」や「保護者に対する調査」とは?
「全国学力テストは、正式には「全国学力・学習状況調査」といい、文部科学省が小学6年生及び中学3年生を対象として毎年実施している“調査”です。国語・算数(数学)・理科の3科目の学力テストと、子どもたちの生活習慣や学校環境に関するアンケート調査を行っているほか、数年に一度「保護者に対するアンケート調査」も行われます。
「子どもの学力は親の年収で決まる」などと論じているニュースや記事などのメディアで目にした人もいると思いますが、これらは保護者に対するアンケート調査の結果を元に書かれているものです。今回は、2017年度に行われた保護者に対するアンケート調査の結果についてお茶の水女子大学がまとめた「保護者に対する調査の結果と学力等との関係の専門的な分析に関する調査研究(以下「調査研究)」から、保護者と子どもの学力との関係性をご紹介します。
「子どもの学力は親の年収で決まる」のは本当?
まず、先ほど紹介した「子どもの学力は親の年収で決まる」という関係について見ていきましょう。調査研究によると、「小6,中3とも,また,いずれの教科,問題においても概ね世帯収入が高いほど子供の学力が高い傾向が見られる。」とされています。確かに、この一文を読むと子どもの学力は親の年収で決まると思えそうです。ただ、これはあくまで「年収と学力とが相関関係にある」というだけで、年収を高めれば子どもの学力も上がるという因果関係までは証明していませんので注意が必要です。
もちろん、年収の高い親は塾や予備校などにお金を費やせるために子どもの学力を高めやすいといった状況は想定できるでしょう。2013年度(平成25年度)と2017年度(平成29年度)のデータを今回の分析では比較していますが、実際のデータとして両者で同様の結果が出ている点からも相関関係の大きさが伺えると各メディアが特筆したのかもしれません。
子どもの学力が高い家庭の傾向とは
では、親はどのように子どもにアプローチすれば良いのでしょうか。調査研究では、子どもの学力が高い家庭の傾向として、以下の14の行動を明らかにしています。
これらの行動を見てみると、生活環境を整えることと同時に、保護者からだけではなく、子どもからの働きかけも多いといえます。つまり親の方から一方的に勉強や成績・進路などの話をするのではなく、子どもからも働きかけができる親子関係であることが、子どもの学力向上に有利に働くのではないか、という事です。
年収が低いなどの「不利な環境を克服している児童生徒の特徴」とは
先述のとおり調査研究では「収入が高いほど子供の学力が高い傾向が見られる。」とされているのですが、一方で年収が低いなどの「不利な環境を克服している児童生徒の特徴」についての研究も行われています。
この研究の中では「特に困難を抱える」と思われる子どもたちの中で学力が高い子どもたちを「resilience(レジリエンス:柔軟さ・回復力)」というワードを用いて「Resilient students」と定義し、Resilient studentsの持つ特徴について以下の4つを明らかにしています。
一つ目の「非認知スキル」とは、「忍耐力」・「意欲」・「協調性」・「粘り強さ」・「目標への情熱」などといった数値で測る事ができない能力の事をいいます。最近は学力やIQなどの数値で測る事のできるスキルだけではなく、非認知スキルを子どもが幼いうちから身に付けさせる事の重要性が注目され始めています。この調査研究でも、非認知能力と学力には弱い相関があることが明らかになっていて、非認知能力を高める親の関わりとして「毎日子供に朝食を食べさせている」「子供のよいところをほめる等して自信を持たせる ようにしている」「子供に努力することの大切さを伝えている」「子供に最後までやり抜くことの大切さを伝えている」「地域社会等でのボランティア活動等に参加するよう子供 に促している」の5項目があがっています。さらに、子どもの好奇心を引き出したり、学習活動を促すような働きかけを積極的にしている家庭では学力が高いという結果も出ています。
他にも「復習中心の学習スタイル」など、どの家庭でも取り入れられそうなスタイルや姿勢が、不利な環境であってもそれを克服している子どもたちの特徴として明らかにされています。
学校の取り組みについての情報も載っている!!
紹介した家庭環境以外に、お茶の水大学の研究結果では学校や地域などとの関係性についても情報がまとめられています。質の高い個別指導が提供されているか・若手とベテラン教員のバランスがとれた組織運営をしているかなど、予測の学力水準を継続的に上回っている学校の特徴は、今後学校を選ぶ機会があるみなさんにはおもしろい情報でしょう。全国学力テストの「保護者に対する調査」、機会があればみなさんもぜひ読んでみてください。
監修:教育ジャーナリスト マザークエスト代表/中曽根陽子
教育機関の取材やインタビュー経験が豊富で、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆。子育て中の女性に寄り添う視点に定評があり、テレビやラジオなどでもコメントを求められることも多い。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探求型の学びへのシフトを提唱し、講演活動も精力的に行っている。また、人材育成のプロジェクトである子育てをハッピーにしたいと、母親のための発見と成長の場「マザークエスト」を立ち上げて活動中。『一歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)、『後悔しない中学受験』(晶文社出版)、『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)など著書多数。ビジネスジャーナルで「中曽根陽子の教育最前線」を連載中。 オフィシャルサイトhttp://www.waiwainet.com/