「算数障害」とはどんな学習障害か?計算や推論が苦手なのはお子さんのせいではないかも

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「算数障害」とはどんな学習障害か?計算や推論が苦手なのはお子さんのせいではないかも

お子さんは数をうまくかぞえられますか? 就学前のお子さんならまだ小さいからと気にしていないかもしれませんが、就学後であきらかに周りから遅れをとっていると心配な親御さんもいるでしょう。もしかしたら数にまつわる処理が苦手な「算数障害」の可能性があります。どういった障害で、親御さんはどのような対応が必要なのか、まとめて紹介します。

算数障害とは計算や推論が著しく苦手な場合を指す発達障害の一種

算数障害とは計算や推論が著しく苦手な場合を指す発達障害の一種

算数障害とは学習障害の一種で、計算や推論が著しく苦手な場合を指す言葉です。また「ディスカリキュリア」の別名で呼ばれることもあります。

算数障害は、就学後に親御さんが気づいて発覚する場合が多いです。算数の授業やテストを通して数の概念やルールなどに触れるなかで、理解が追いつかないのが明確になります。そのため、就学前に気づくのは難しいかもしれません。

また知能能力が低いわけではないのに、算数の領域だけ苦手なのが算数障害の特徴といえます。なかには算数の一部の領域だけが苦手な場合もあり、専門家でないと明確な判断が難しいのです。

■算数障害の特徴
算数障害かどうかは専門家の診断によって決められますが、家庭での発見につながるヒントがあります。下のような特徴が見られないか、一度注意して見てみてください。

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・数の大小や順番が解からない
・高学年になっても計算が遅い
・暗算はできるのに筆算ができない
・いつまでも指を折って数をかぞえている
・簡単な数字や記号が理解できていない(例:『さん』と聴覚的にきいて、数字の【3】を連想できていない)
・繰り上がり・繰り下がりが理解できない
・図形・グラフが絡む問題や文章問題が苦手
・九九がいつまでも覚えられない など
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これらは算数の学習を通して発見されやすい特徴だといえますが、ほかにもたとえば家庭において就学前のお子さんに次のようなことがあるかもしれません。「お皿を3枚並べて」と頼んでも2枚しか並べていない、お風呂に入っていて「10秒数えて出なさい」と言ってもうまく数えられないなどです。

子どもが算数障害かもしれないと思ったら

子どもが算数障害かもしれないと思ったら

算数障害のお子さんは、みんなが出来ていることが自分だけできずに苦しんでいるはずです。根治はしませんが、親御さんがフォローしてうまく付き合っていければ算数障害の悩みは解消できます。知的能力が低いわけではないため、ほかの能力で補って障害を感じさせないお子さんがいるのも事実です。下のような対応を親御さんは試みましょう。

■専門機関に相談をする
先述のような特徴や異変に気付いたら、算数障害かどうかを相談して診断を受けてください。児童精神科を受診する前に、まずは自治体の相談窓口に訪れて病院や専門家を紹介してもらうのが良いでしょう。自治体の相談窓口は、保険センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所などです。もしくは小中学校の特別支援教室を頼ってもいいかもしれません。

■算数障害と診断される基準
医療機関ごとで異なりますが、算数障害診断の基本的な流れはまず問診するところから始まります。生まれたときから現在までの困りごとや養育環境・家族歴などを話してください。
そこからCTやMRIなどの機器で脳の状態を検査したら、「WISC-Ⅳ」とよばれる知能検査や「KABC-Ⅱ」や「DN-CAS」とよばれる認知能力検査などで心理検査を行います。すべての結果を総合的に判断して、学習障害や算数障害ではないかが判断されます。
ほかにも学習障害と区別する際に、IQを基準に判断するケースがあります。目安として、IQ70以下のそもそもの知能に問題がある場合は知的障害に、IQ90以上あるのに算数の領域だけが苦手な場合は算数障害になります。

算数障害の子どもへの向き合い方

算数障害の子どもへの向き合い方

実際にお子さんが算数障害と診断されたときのために、接するときの注意点をぜひ頭に入れておいてください。親御さんの向き合い方ひとつでも、お子さんが救われることはあります。

■算数障害に対する理解を深める
正しい知識をもとに、算数障害の子どもと向き合うのが大切です。本やネットでも勉強できますが、専門機関に助言を求めたり、同じ障害を持つ子の親御さんから情報を得たりするのも良いでしょう。親御さん同士で交流して悩みを共有できれば親御さんの不安も和らぐはずです。

■子どものできないことを認め、できることに注目する
お子さんが算数を苦手にしているのは障害のせいだという現実をしっかり受け止めましょう。現実を受け入れるのはつらいかもしれません。しかし、無理やりお子さんに算数をやらせても効果は出ず、むしろ逆効果です。“よそのお子さんができるのに、自分の子はできない”との比較もやめましょう。
先述のとおり、他の能力が長けているお子さんであれば、苦手を補って自身で問題を解決しているケースもあります。ほかにも他の教科に得意な教科や活動があるならそちらに目を向けて伸ばしてもいいのです。お子さんをしっかり肯定してあげてください。

■普段の生活から数を意識させる
他の能力で苦手を補うトレーニングとして、普段の生活からお子さんに数を意識させてみるのは良いでしょう。たとえば食事で唐揚げを食べる際に“3つ食べるよりも5つ食べる方がおなかいっぱいになる”とおなかが満たされる感覚と数を連動させてみてください。ほかにもお風呂に入るときに“10秒数えて上がるより、100秒数えて上がった方が温まる”と体が温まる感覚と連動させるなどでも良いでしょう。こういったトレーニングを通じて数の大小や順序などを感覚的に捉えられるように促すのです。

計算機を使ったってOK!算数障害でもお子さんが自立できる環境づくりを

計算機を使ったってOK!算数障害でもお子さんが自立できる環境づくりを

算数障害について基本的な情報をまとめましたが、お子さんが大人になって自立した生活が問題なく送れるように成長するのが大事なのを親御さんはぜひ心に留めておいていただきたいです。
計算が難しかったとしたら、計算機やパソコンなどのツールに頼っても問題ありません。むしろ学校などと相談してそういったツールの利用を許可してもらい、障害とお子さんがうまく付き合える環境づくりを親御さんには取り組んでいただきたいです。
算数障害が心配なあなた!まずはお子さんに変わったところがないか、しっかり向き合うところから始めてみてください。

井上智介

監修:井上智介

島根大学を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び2年間の臨床研修を修了する。 その後は、精神科医、産業医の2つの役割を中心に活動している。精神科としては、うつ病、発達障害などを中心にして、全般的に精神科疾患を対応している。産業医としては、毎月30社程度を訪問して、精神科医や健診医の経験もいかして、労災や健康障害の防止の活動している。さらに、全ての国民に医療情報の正しい理解を目標にして個人ブログやSNSを活用するだけでなく、コラムを担当したり、全国で講演したり、精力的に医療情報の発信を続けている。