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“お金あげるからやって”“お金がないからダメ”はOK? 子どもをお金で動かす影響
お金くれないならイヤだ。お手伝いをお願いして、こんな風にお子さんから言われた方もいるのではないでしょうか。お手伝いするならあげてもいいかと思ったり、お金で子どもを釣っているようで罪悪感を抱いたり。お金に関する親の発言が子どもにどのような影響を与えるのか、まとめながら考えてみましょう。
「お金をあげるから」の悪影響「アンダーマイニング効果」
冒頭のような“お金がもらえないなら手伝わない”考えは、「お金をあげるから○○をやって」と親が子どもに言ってきた結果かもしれません。「アンダーマイニング効果」が作用し、お子さんに染み付いてしまった悪影響といえます。
お金やものなどの物質的な報酬(外発的動機)によって、自分からやりたいと思って動いていた子どものモチベーション(内発的動機)が下がってしまう・抑制されしまう現象をアンダーマイニング効果といいます。アンダーマイニング効果の影響を減らす・なくすために、お金で子どもを動かすのは避けて、「ありがとう」「助かったよ」と感謝やほめの言葉をかける方法論を推奨する専門家もいます。
教育の機会にすべきと考える人も
一方で、お金を介してマネーリテラシーを上げられる点を推している人もいます。親を助けた結果としてお金がもらえると子どもが理解できれば、教育のチャンスになるとの考えからです。年齢や労働力に見合った対価を事前に設定し、自分で稼ぐ喜びを味わわせてみるというわけです。
対価が一定であれば短時間で効率よく仕事を終わらせる方法を子どもも考えるようになり、自分で稼いだお金は大切に使うようになるだけでなく、想像力や発想力が磨けるチャンスと考えています。
親の助けをするお手伝いから、人を助けたり人のために働けたりするようになれば、対価が得られる経験をさせるのも有効といえます。お金を渡すときに感謝の気持ちも添え、人のために働く本質をより感じられるようにするといいかもしれません。
「お金がない」と言って我慢させる
「お金がない」もよく使われる言葉といえるでしょう。ただお金がない発言は、子どもの感情を萎縮させる可能性があるため、使わない方が良いです。何か欲しがると親を困らせるんじゃないかと不安にさせたり、周りの友達と比べて引け目を感じてしまったりするかもしれません。
お金がないと言われて育つと、大人になってから本人が苦労する恐れもあります。消費への罪悪感を抱いたり、貯蓄に執着してしまって過度な節約に走ったり。反動的に浪費癖がついてしまう危険もあるでしょう。
仮にお金があっても子どもの金銭感覚を養おうとする気持ちからお金がないと言っている親御さんもいるかもしれません。しかし「お金がない」という認識がそのまま良い金銭感覚へ結びつくわけではありません。我慢させたい場面では正当な方法で伝えていく方が望ましいといえます。
無条件・定額であげている「おこづかい」の意味も感じさせる
子どもへのお金というと、「おこづかい」で完結させている家庭もあるでしょう。月々の定額制は、給料制に倣った考え方でありながら、働かずに無条件で与えていてはお金を得る苦労を学べないと、否定的な意見をしている人もいます。ルールを作らないで無条件であげるのは避け、お小遣い帳をつけさせれば、計画性や忍耐力を養わせる機会にもなるとの考えからです。
またおこづかい肯定派の意見として、先述したアンダーマイニング効果をさけられる点が挙げられます。「○○したら10円」という報酬型のおこづかいではお金のために手伝うようになり、お手伝いが好きだった気持ちが抑制される可能性があるため、おこづかいは定額で、お手伝いはほめ言葉で十分と考えます。
お金との付き合い方はそれぞれに良し悪しがあり、ご家庭によって考え方がことなるため、お子さんともぜひ話をしてルールを決めてみてください。
与え方と合わせて、お金に関する声かけにも気遣いを
子どもの金銭感覚は、親御さんの声かけや価値観に依る部分が大きいものです。とくに、お金をもらう大変さや大切に使う価値観は育んでいきたい感性であり、お金がないなら我慢するか、無ければどうしたら稼げるのかを考える力もお子さんには身につけさせたいのではないでしょうか。
お金のためではなく、人のために働くからお金がもらえるのを理解させられるかは親御さんの心がけ・声かけで変わってきます。親が繰り返し発した言葉は、子どもの心に刷り込まれやすいので、お金に関する話をするときは、お子さんの金銭感覚を磨くために有効な表現かを意識してみるといいでしょう。
監修:佐藤めぐみ
ポジティブ育児研究所 代表 & 育児相談室「ポジカフェ」主宰 イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。現在は、ポジティブ育児研究所でのママ向けの検定事業、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポートする活動をしている。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。