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宿題がなくて期間が2〜3ヶ月ある国も。欧米と日本の「夏休み」はここが違う
もうすぐ夏休みが始まります。問題集・絵日記・読書感想文……と盛りだくさんの宿題に今から憂鬱になっている方もいらっしゃるかもしれません。日本では当たり前の宿題セットですが、実は海外では非常に珍しいもの。では、日本と海外の夏休みにはどんな違いがあるのでしょう。欧米の小中高の情報を中心にまとめてみたいと思います。
明治から令和までの日本の夏休み
これが、日本の夏休みの特徴です。宿題については、時代を経て変化してきました。夏期休業の導入当初は1日ノート1ページ程度で、上半分に勉強、下半分に日記を記すのが主流だったといわれています。たくさん出されるようになったのは大正時代からで、下のような流れで今の形に収まったようです。
宿題なし・期間も長いアメリカ・ヨーロッパの夏休み
では、明治時代に日本がモデルとした欧米の夏休みにはどんな特徴があるのでしょうか。
・期間が長い
6月上旬~8・9月と、2~3ヶ月間も休みがあります。理由の一説として、義務教育制度がなかった頃のアメリカの話が挙げられます。当時は年間250日前後も授業をしていましたが、授業に出る生徒が少なかったため、財政的・現実的におかしいと論争がおきました。授業日数を減らす方向に話が進み、空調設備がなかった当時、健康的観点から夏学期が丸々休みになったのです。
ほかにも、秋から春の間は晴れた日が少ないため夏に太陽を浴びるべきとの考えや、農作物の収穫時期で子どもに手伝わせるためなど、諸説が存在します。これほど長い休みにもかかわらず、登校日も部活もありません。6月に休みがはじまったら、新学期が始まるまで、学校は完全クローズ。この点も、日本との大きな違いでしょう。
・宿題がない
さらに驚くのは、宿題です。これほど長い休みにもかかわらず、宿題を出す学校は少数派です。読書を推奨する学校は多いようですが、問題集やプリント学習を手渡す学校はほとんどありません。また日本のような受験戦争がないため、塾通いもなし。夏の期間に、机に向かう“勉強”の時間は明らかに日本の事情とは違うのが分かります。
教育への考え方、大学の位置づけの違いも影響している
「長い夏休みを宿題なしで過ごす」慣習がなぜ欧米では定着しているのでしょうか? 理由をまとめてみましょう。
・学校の制度が違う
日本では4月始まりの3学期制が主流ですが、諸外国では9月から新学年の2学期制を採っている所がたくさんあります。そのため、夏は学年の切り替え時期にあたり、長期休みを入れるのに都合がよかったといえます。さらにアメリカでは、夏休みを機に転校・進学する子どももたくさんいます。日本では夏休みの間もその学校・先生の生徒なので予習・復習のために宿題を出しますが、学校・先生と生徒の関係がなくなってクラスが一旦解散してしまう国もあるのです。
・大学の仕組みが違う
日本は大学入試のハードルが高いため、小中高の時期にたくさん勉強する反面、大学生になると勉強時間が減るといわれています。いい大学に入学するために小中高の段階で宿題などをたくさんして対策をしているのです。反対に海外では、大学に入るハードルは比較的低いかわりに卒業するのが難しく、大学生になってから勉強する時間が増えます。その学校に入るために勉強をするか、出るために勉強するかが、日本と欧米諸国では大きく違うのが分かります。
・教育に対する考え方が違う
大学の違いとも関連しますが、海外では子どもの間に遊びを通して発想力や想像力を養うのが大事で、勉強するのは学習意欲が芽生えた大学生からで十分だと考えられています。そのため子ども時代は、価値観や教養の幅を広げられる読書が推されているのです。反対に、誰かに強制されて受け身になる宿題は、否定的に捉えられています。
アメリカではサマーキャンプに子どもを預ける家庭も
宿題もない長い夏休みの間に、欧米の子どもたちは何をしているのでしょう。まずヨーロッパでは、大人たちの夏休みも長いのが特徴的です。1ヶ月程度休むので、家族でキャンプに行ったり実家に戻ったりなど、子どもの面倒をみられる家庭が多いとされています。
一方のアメリカでは、大人の夏休みは2週間程度。日本人からしたら十分に“長い夏休み”ですが、ヨーロッパと比較すると半分程度と短く、子どもと一緒にできること・面倒を見られる範囲も限られてしまっています。そのため、アメリカでは子どもを集めて遊ばせたり習い事(スポーツ・科学・ダンスなど)をさせたりする「サマーキャンプ」を多くの家庭が利用しています。コースには割高なものもあるため、安価な公共のサービスを利用する家庭もいます。
世界の夏休みを知って、この夏の過ごし方を考えてみよう
宿題がなくて期間が長いと、気楽で良さそうにも見えますが、文化や制度の違いで一長一短がある点を忘れないでください。日本で、もし何も宿題が出なくなったら、逆に不安に感じてしまうと考える方もいるでしょう。塾通いがさらに激化して、個人差が生まれる要因になってしまう可能性もあります。そう考えると、ある程度の宿題を学校が出す慣習は、日本らしいあり方なのかもしれません。
お子さんにとってどんな経験がこの夏のカギになるのか。諸外国の夏休み、ひいては教育への考え方で参考になる部分は拝借しながら、より有意義な夏休みについてご家族で話し合ってみてください。
監修:佐藤めぐみ
ポジティブ育児研究所 代表 & 育児相談室「ポジカフェ」主宰 イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。現在は、ポジティブ育児研究所でのママ向けの検定事業、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポートする活動をしている。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。